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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1057号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕(申立の要旨)

申立人は、相手方から、昭和二四年一二月九日東京都豊島区駒込六丁目七八一番三宅地116.36平方米のうち42.97平方米(以下本件土地という。)を非堅固建物所有の目的、期間二〇年の約で賃借し、同地上に別紙目録記載の建物(以下本件建物という。)を所有しているところ、狭隘のため29.16平方米の二階を増築したいが、右借地契約には一切の増改築を禁止する旨の特約があり、相手方は、右増築を承諾しないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によれば、右の事実のほか、申立人は、従前から本件土地の南側に隣接する塩原さきの所有地の一部6.61平方米余を物干場用に借り受けていたが、本件増築の敷地面積としては本件土地のみでは建ぺい率上不足するので、右借受地のうち6.61平方米を敷地面積に加えることについて塩原さきの承諾を得、既に豊島区役所建築主事の確認を得ているのみならず、本件土地の附近はアパートが多く、概ね二階建の建物が建つていることが認められるので、本件増築は、土地の通常の利用上相当であるというべきである。

本件借地権の存続期間は昭和四四年一二月八日までで、相手方は、自ら本件土地を使用する必要上期間満了後更新を拒絶する意思である旨表明しているが、更新拒絶が正当の事由に基づくとは認め難く、他に本件申立を排斥すべき事情もないので、本件申立は、これを認容することとする。

2 次に、附随の処分について考える。

戦後、都市人口の急激な増加に伴い、借地権が、単に法律上の財産権としての意味を有するに止まらず、経済的にも独立の価値を有する財産としての性格を強め、その価格が形成されるにいたつたことは、周知のとおりである。この借地権価格が、都市により、また、同じ都市においても借地の存する地域により異るのはもとより、同じ地域内においても、借地契約の内容――借地人に有利ないわば強い借地権と借地人に不利な弱い借地権――により差異を生ずべきは、当然の事理である。借地非訟事件の裁判は、国家(裁判所)の介入により、借地契約を強権的に変更するものにして、その結果借地権の価格に変動を来すことがみるべく、この場合、当事者の利益の衡平を図るため、借地人に対し財産上の給付を命ずるのが相当であるが、財産上の給付は、裁判の前後における借地契約そのものの価値の変動に着目して求めらるべきである。

しからば、本件借地権の価格は、許可の裁判により、どの程度増加するであろうか。本件増改築許可の裁判は、増改築禁止の特約を全面的に排除するものではなく、本件申立にかかる増築についてのみ右特約を一時的に排除するに止まり、いわば、一回限りの増改築を許容する借地契約に変更することにほかならないので、その価格は、増改築禁止の特約の全く存しない価格を上限とし、右特約の存する価格を下限とした場合、その中間に位するものと考えるべきである。ところで、不動産鑑定の専門家が借地権価格を算定する場合、土地価格に対する割合を求めるのが通例のようであるが、右の割合は、借地権の強弱を考慮に入れることなく、非堅固建物の所有を目的とする借地権にあつては、かかる借地権一般としてその割合を求めるのが実情であるので、借地権の強弱による割合を求めることは、現状においては困難である。しかし、借地権の強弱による割合が未知数であるとしても、仮りに、強い借地権の割合をA%とし、弱い借地権の割合をB%とした場合、AとBとの差が何%ぐらいであるということは、およその見当はつく。本件のような増改築禁止の特約のある借地権と右特約の全くない借地権との土地価格に対する割合の差はおよそ一〇%ぐらいであろうと思われる。増改築にも、旧建物を取り毀して新築するものもあり、旧建物に建て増すものもあり、増改築の内容により建物の耐用年数に差異があり、借地権の価格にも差異を来すが、右価格の増加は、すべて、右一〇%以内ということになる。本件増築は、旧建物はそのままとし、これに二階を増築するのであるから、これによる借地権価格の増加は、他の増改築に比較して少いというべく、当裁判所は、これを土地価格の約三%とみる。鑑定委員会は、本件土地の更地価格を二〇八万円(3.3平方米当り一六万円)と評価しているので、右評価に基づき、財産上の給付額をその約三%に当る金六万円とする。

なお、本件増改築許可の裁判は、賃料増額の要因にはならないので、賃料の変更はしない。(小山俊彦)

目録

東京都豊島区駒込六丁目七八一番地

所在家屋番号甲第七八一番三

木造メッキ鋼板葺平家建居宅

床面積二九、七五平方米(九坪)

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